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肺炎球菌ワクチンは必要?~何をいつ接種すれば良いの?~

[2026.04.01]

当院では、胃カメラや大腸カメラなどの消化器診療を専門としながらも、地域の「かかりつけ医」として一般内科の診療や、皆さまの健康を未然に守るための予防接種にも力を注いでおります。特に肺炎球菌ワクチンについては、2026年4月から制度の大きな変更があったこともあり、「自分はいつ何を打てば良いのか」「以前打ったことがあるけれど、次はどうすれば良いのか」といったご相談をいただく機会が増えました。今回は、肺炎球菌という菌が引き起こす病気のリスクと、それを防ぐためのワクチンの重要性、そして具体的な接種スケジュールについて、医師の立場からできるだけ分かりやすく、お伝えできればと思います。

肺炎球菌ワクチンで予防できる病気や症状

肺炎球菌という名前を聞くと、単に「肺に炎症を起こす菌」というイメージを持たれるかもしれません。しかし、実際にはこの菌は私たちの鼻や喉の奥に普段から潜んでいることもある、非常にありふれた菌の一つです。健康な時には何も悪さをしませんが、体力が落ちたり、他のウイルスに感染して免疫力が低下したりした隙を突いて、体内のあちこちで暴れ出す性質を持っています。

この菌が肺に入れば肺炎を引き起こしますし、耳に入れば中耳炎、副鼻腔に入れば副鼻腔炎の原因となります。特に高齢の方において恐ろしいのは、菌が血液の中に入り込んで全身に回ってしまう侵襲性肺炎球菌感染症と呼ばれる状態です。これにより、血液中で菌が増殖する菌血症や、脳を包む膜に炎症が及ぶ髄膜炎といった、極めて重篤な合併症を引き起こすことが考えられます。

肺炎は日本の死因において常に上位に位置していますが、その中でも肺炎球菌は、成人の細菌性肺炎の原因として最も頻度が高いことが知られています。肺炎になると、激しい咳や高熱、胸の痛み、息苦しさといった症状が現れますが、高齢者の場合はこうした典型的な症状が出にくいこともあります。「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」といった、一見すると風邪とは無関係に見える変化が、実は肺炎のサインであることも少なくありません。

当院では、こうした重症化を防ぐためにワクチンの接種を推奨しています。ワクチンを打ったからといって100パーセント肺炎にかからないわけではありませんが、もし感染してしまったとしても、症状を軽く抑え、入院が必要になるような重篤な状態を避ける効果が期待できるでしょう。健康な生活を続けるために、このワクチンが果たす役割は非常に大きいのです。

肺炎球菌ワクチンの種類と「何をいつ打てば良いか」

現在、日本国内で成人が接種できる肺炎球菌ワクチンには、主に以下の3つのタイプが存在します。それぞれに特徴があり、使い分けが重要になります。

  • 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(商品名・・ニューモバックスNP)
  • 20価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名・・プレベナー20)
  • 21価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名・・キャップバックス)

ここで皆さまが最も迷われるのが、「いつ打てば良いのか」という点でしょう。

現在は定期接種の対象は「65歳の方」となっており、接種日時点で65歳の方が一生に一度、公費補助を受けて接種できる制度にとなっております。

定期接種ではこれまで、23価ワクチン(ニューモバックス)が長く使われてきました。このワクチンは、非常に多くの種類の肺炎球菌(23種類)をカバーしており、効率よく免疫をつけることができます。ただし、その効果は約5年を過ぎると徐々に低下してくると考えられます。そのため、過去に一度接種したことがある方でも、5年以上経過している場合は、任意接種(自費)での再接種を検討する必要性がでてきてしまうというデメリットがありました。

一方で、その後に登場した20価ワクチン(プレベナー20)は、免疫の記憶が長く残りやすいという特徴を持っており、接種後の再接種は必要ないとされています。効果についてもニューモバックスとほぼ同等とされており、以上のことから定期接種で使用されるワクチンは2026年4月よりニューモバックスからプレベナーに変更となっております。

さらに最近では21価ワクチン(キャップバックス)というワクチンも発売されており、こちらもプレベナーと同じく結合型ワクチンで効果が長く続く、かつプレベナーやニューモバックスより有効性も高いという特徴があります。

当院では、患者さんのこれまでの接種歴や、糖尿病、慢性的な心疾患、呼吸器疾患などの持病の有無を考慮しながら、どちらのワクチンを接種できるか、接種すべきか提案しています。

具体的には、これまでに一度も肺炎球菌ワクチンを打ったことがない65歳の方は、まず定期接種として20価ワクチン(プレベナー20)を受けるのが一般的です。しかし、より強固な免疫を獲得したい場合や、重症化リスクが高い疾患をお持ちの場合は、さらに一定期間を開けてから21価ワクチン(キャップバックス)を接種するという考え方もあります。スケジュールについてはやや複雑となりますので、ぜひ診察の際にご相談ください。

料金について

肺炎球菌ワクチンの接種にかかる費用は、お住まいの地域や助成対象か否かによって異なりますが、費用の目安は以下の通りです。

(任意接種については当院での設定価格となります)

肺炎球菌ワクチン価格表(目安)
ワクチンの種類 定期接種(65歳の方) 自費での接種(任意接種)
23価ワクチン(ニューモバックス) 対象外 8,500円
20価ワクチン(プレベナー20) 8,000円 12,100円
21価ワクチン(キャップバックス) 対象外 15,400円

定期接種の対象となるのは、65歳の方や、60歳から64歳で心臓、腎臓、呼吸器の機能に高度の障害がある方などです。対象となる方には仙台市からハガキなどの通知が届きます。自費での接種料金については、各クリニックによって設定が異なるため、事前に確認することをお勧めいたします。

肺炎球菌ワクチンについてのよくある質問

Q1. 副反応が心配ですが、どのような症状が出ますか?

A1. 最も多いのは、注射した部位の痛み、赤み、腫れです。これらは接種した方の約半数に見られますが、通常は2日から3日程度で自然に治まります。まれに発熱やだるさを感じる方もいらっしゃいますが、重篤な副反応が起きる頻度は非常に低いと考えられます。

Q2. インフルエンザワクチンと一緒に打つことはできますか?

A2. はい、可能です。医師が必要と認めた場合には、同時に接種することができます。別々に打つのが面倒な場合や、何度も来院するのが大変な場合は、一度の受診で済ませられる同時接種を検討しても良いでしょう。

Q3. 以前に打ったことがありますが、もう一度打つ必要はありますか?

A3. 23価ワクチン(ニューモバックス)の場合、効果が約5年で減衰するため、前回の接種から5年以上経っている場合は再接種が推奨されます。再接種にどのワクチンを使用するかはそれぞれメリット・デメリットがありますので慎重な検討が必要です。

Q4. 肺炎球菌ワクチンを打てば、肺炎には絶対になりませんか?

A4. 残念ながら「絶対」とは言えません。肺炎の原因はウイルスや他の細菌、誤嚥など多岐にわたります。肺炎球菌ワクチンは、あくまで「肺炎球菌による肺炎」の重症化を防ぐためのものです。一方で、インフルエンザや新型コロナウイルス感染など、何らかのウイルス感染に罹ると肺炎球菌がさらに感染して(二次感染といいます)肺炎を引き起こし重症化し命に関わることがあります。この二次感染の予防という点でも肺炎球菌ワクチン接種は重要です。また、日頃の手洗い、うがい、そして口腔ケアなども併せて行うことが大切です。

院長より

皆さまは「肺炎」と聞くと、どのようなイメージを持たれますか。多くの方は「咳が出て、熱が出る風邪のひどいもの」と思われるかもしれません。しかし、医療の現場で多くの患者さんを診てきた立場から申し上げますと、肺炎は生活の質を一気に低下させ、時には自立した生活を困難にさせてしまう非常に怖い病気です。

特にご高齢の方の場合、肺炎をきっかけに入院し、ベッドで過ごす時間が長くなることで、足腰の筋力が衰えたり、認知機能に影響が出たりすることもあります。私たちは、皆さまにいつまでもご自身の足で歩き、美味しいものを食べ、笑顔で過ごしていただきたいと願っています。そのためには、病気になってから治す「治療」はもちろん重要ですが、病気を未然に防ぐ「予防」こそが、最も価値のある医療ではないかと考えられます。

「肺炎球菌ワクチンを打ちたいけれど、どれを打てば良いのか分からない」「副反応が怖くて踏み出せない」といった不安をお持ちの方も、どうぞ遠慮なくまずは一度、ご相談にいらしてください。

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